2012-05-17

気の毒なこと


巨大な稲光が天を裂き、地の底から響いて来るような雷鳴が何度も近付いては遠ざかってゆく。今夜はこれが夜を通して続くという。

今朝のことだった。いつものように家を出て、我が家のすぐ横を走る県道から狭い堤防上の道に右折すると、道路上に様々なものが散乱しその先に男性が自転車ごと倒れているではないか!その男性の少し手前でトヨタのwishが停まっていたので、彼が撥ねられた直後だったようだ。ロードスターを脇に停め、彼の様子を確認しwishの女性に『救急車は呼んだの?』と聞くと、もう呼んだという。それからすぐに彼女が僕に電話を渡し、『現場の状況を警察に説明してくれませんか』と言うので電話口の警官には僕の見たままのことと、場所の説明をして電話を返し、脳しんとうで朦朧としている彼に話しかけると、案の定彼は中国人だった。毎朝大体これくらいの時間にもう少し南にある工場に出勤する数人の中国人の姿を僕は見ていたので、彼の外見を見てすぐに中国人であることは分かっていた。彼は片言の日本語を話せ、出身は山東省だと言っていた。彼の持っていた手提げ袋には日本語を勉強する分厚いテキストが2冊入っていて、どれもかなり使い込まれていた。
脳しんとうがひどいようですぐに立ち上がることはできず、彼を撥ねた車を見てもフロントガラスが完全に割れ、ボンネットが大きく凹んでいることからその衝撃の大きさが想像できる。彼に救急車がもうすぐ来るので病院へ行くことになると言うと、ちょっと心配げな顔をして『僕は大丈夫、大丈夫』という。その感じから彼がお金の心配をしていると思ったので、『保険があるからあなたは払わなくてもいい』と伝えたかったが、そこまで中国語は話せず、英語も彼には通じなかったので困ってしまった。久しぶりに言葉が通じない場面に出くわし自分がほんと情けなかったよ。こうなったら筆談しか無いと、紙とペンを用意した所で救急車が来た。それからあとのことは救急隊員達に任せて僕は事故現場を離れた。
道路に散乱していたモノの中に大きな饅頭(マントウ)が2個あったので、拾って来て彼に『朝食まだやったの?』と聞くと、『それは昼ご飯』と教えてくれた。おそらく安い賃金で働かされ、食事をマントウなどで切り詰めて仕送りなどしているのだろう。彼が自分の身体のことではなく他のことを心配していたのが、なんか余計気の毒に思えたよ。

みなさん重々気をつけましょう。

0 件のコメント: