2013-01-07

光と影の衝動















写真家・東松照明が死んだ。
写真学校の学生の頃、図書室に籠りいつも見ていたのが東松照明とセバスチャン・サルガドの写真だった。どちらもモノクローム写真ではどぎついまでのコントラストと、荒々しいまでに粒子の荒れた写真が特徴で、その写真表現は技術をもって表現すると言うより『全身でぶつかってこうなったのだ』という強烈さを持ち、その写真の数々は今も脳裏に焼き付いて離れない。特に僕が影響を受けたのが東松照明の『太陽の鉛筆』で、いま思うとあまりにも単純な反応だが、その写真集を見て突き動かされるようにカメラ抱えて沖縄行きを決行し、そのまま19から20歳に渡って1年近くを波照間島で過ごすに至った。さらには琉球弧から南方へ・・との夢というより衝動にかられて中国・上海を皮切りに2年半に渡る東南アジアから西アジアそして中東そこから飛んでアメリカという動きへと繋がったのだ。
僕の生き様の原点が『太陽の鉛筆』だとは言わないが、先にも述べたように大きな影響を与えたことは間違いない。残念ながらこの写真集を手元に持ってはいないが、ネット上にある抜粋写真を見るだけで胸の奥で『ドクドク』と反応するものがある。あの頃の憶いは未だ健在だ。
東松照明は死んだ。しかし彼の憶いもまた数々の写真の中に宿り、彼の魂は永遠に生き続けるだろう。
写真とは不思議なものだ。そこに写っている人も、写した人も死んでしまって居ないというのに、残された写真だけは当時のまま汗をかき、血を流し、息を吐いている。
東松照明は人々の刹那の生を切り取り、それを永遠のものにする力を持った偉大な写真家だった・・

黙祷

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