2012-10-03

何をもって名を残すか




シリア・アレッポの状況は混迷を極めている。
政府軍と反政府勢力との戦闘は激しさを増し、ついに戦火は世界遺産にも登録されている旧市街区にまで及んでしまった。1500軒にも上る商店が火災の被害を受け、『これぞ中東の市場』と思わしめるスークは無惨な姿をさらしていた。これを見たアレッポ住民・シリア国民の落胆は如何ばかりのものだろう。
アレッポ周辺に人が住み始めたのは紀元前20世紀にも遡り、おそらくその頃にはスークの原型らしきものが出来ていたことだろう。7世紀頃にイスラム勢力によって街が統治され始め、その頃から今に残るスークに姿をかえっていったという。しかしそのスークもほとんどが焼け落ち、貴重な建築群が失われてしまった。
アレッポの住民達によって何百年と守られて来た文化遺産は、愚かな権力者の判断ミスによって焼けてしまったのだ。この悲惨な内戦の結末が政府軍の勝利かそれとも反政府勢力の勝利になるのかはまったく分からない。しかしシリア全土にある貴重な文化遺産が傷つき、失われたのは愚かなアサド大統領のせいであると歴史は記すだろう。彼は内戦に勝利して一時期の権益を守ることが出来るかも知れないが、その名は千年の後まで『愚かな破壊者』としてシリア国民に語り継がれることになるのだ。

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