2007-12-25

ニライカナイ


二十歳の頃、写真を撮ることに行き詰まりこの言葉に飛びついた。
ニライカナイ・・そんな理想郷があるなどとは信じていなかった。でも、何かが僕の中で動き始めていた。
理由なんてどうでも良かった。思い立ったらすぐに実行しないと気が済まない性分で、僅かな荷物を持って沖縄行きのフェリーに乗ったのは学校卒業の2日後だった。
とにかく南を目指す!との思いで途中寄り道もほとんどせず波照間島にたどり着き、最南端の岬に立ってみた。当然理想郷などはなく、一面の大海原が広がっているだけだった・・
日も暮れるというのに何もない岬に呆然と立っている僕に、たまたま通りかかった民宿のヘルパーさんが声を掛けてくれた。その日から僕の1年近くに及ぶ波照間島での生活が始まったのだ。その生活は今思うと奇跡的なほどに充実し、全身の毛細血管の隅々にまで血が勢いよく回っているのを実感できるほどだった。
ニライカナイは無かった。
しかし、それを目指した僕には違う世界が開け、多くの人と出会うことができた。
そうか、ニライカナイとはそういうことなのかも知れないな・・
遠い南の海の彼方に僕が追い求めたものは、実は自分の心の中にあったのだ。

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