2009-07-01

河川敷のオペラ


雨降って地固まる、じゃなくて雨降って草伸びると言った方が僕にとってはより現実味のある言葉と言える。梅雨前から取り組んでいる河川敷の草刈りも大方は刈り終え、薮のようになって残っている部分はホームレスの2人が住む橋下に面した一角だけとなった。この一角だけは緩衝地帯のようなかたちで残そうかとも考えていたが、葛が文字通り蔓延り加えて野茨の巨大な薮もある為、やはり一度刈り払い河川敷を更新した方が良いと考えて手を付けることにした。ホームレスの人にしたら今まで薮で目隠しになっていたものを刈り払われるので、『余計なことを』と思っているかも知れないが、こちらにすれば彼らの煮炊きの火が薮に燃え移り火災を引き起こす心配や、薮にゴミを捨てられたりプラスティック製のゴミを燃やされることも少なくなると思うので、ここは一つ刈り払って彼らの反応を見ようと思っている。

そこで先週末その鬱蒼とした薮と草刈り機にて闘っていると、どこからか歌声が聞こえて来る。何だろう?と思い草刈り機のエンジンを止めると、それはオペラだった。更に耳を澄まして聞いているとそれはどうやら橋の下から流れているようなのだ。音質からするとラジオ放送のようで、彼らの住処の方を覗き見ると一人が川のほとりに椅子を出して腰掛け、日向ぼっこしながらオペラを聴いているようだった。その瞬間、いま自分が立っているこの河川敷の空気とより調和がとれているのはオペラや日向ぼっこしている彼であって、けたたましいエンジン音を発しながら傍若無人に草を刈り回る自分でないことはあまりにも明らかなことだった・・
僕は急に疲れを感じ、草刈り機を持って河川敷を去ることにした。

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