2008-10-04

城にありて思うこと


今週末で城山に張り付いた第一次工作隊は作業を終了し、素図として取り敢えずの成果を提出することになっている。作業が始まってからの
一ヶ月間ほぼ毎日城に登城し、城山を隈無く歩き回り、城の表の顔そして裏の顔を見て来たが、見れば見るほど謎は深まり往事の姿をこの目で見たいと言う願望が強くなるばかりだ。今は草木に埋もれ判然としない一つ一つの痕跡には古の人々の魂が宿っているようで、一見するとただの岩肌も敵が容易に登れぬよう鑿で丁寧に面取りを施し、横矢掛け、犬走りを設け防御力を高めようとした努力が散見され、鬱蒼とした森の中にひっそりと佇むこれらの遺構を前に1人鉈を片手に息を荒げていると、まるでその自分の息づかいが遠き戦国の世の武者らの息づかいと同調するような妙な感覚に陥り、これも6度落城したというこの城の持つ霊気よるものか・・と思ったりもするのだ。
廃藩置県に伴う城の破却や度重なる大地震により現在の姿となったこの城の、覆い隠された本当の姿はすべて森の中に埋もれている。極言すれば戦国の世の武者らの魂は今に残る天守や櫓の中などは存在しないのだ。彼らの魂は岩山を穿った堀切や竪堀、腰曲輪や犬走りといった目立たぬ場所に存在し、今でも城を守っている。我々に課された任務はこの城山に宿るこれらの魂を感じ取り、それらを図化し後世に残すことだ。

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