2011-07-23

『おきて』と『さだめ』


数日前のことだった。
堤防から河川敷に降りようとすると、子猫の『みいみい』という鳴き声が橋の方から聞こえて来た。近付いてゆくと橋の土台のコンクリートの上をまだ目も開いてない子猫が這いずり回っていた。『おまえこんな所で何しとるん』と辺りを見回すも親猫の姿は見えず、『誰かが捨てたのだろうか?』と思うも状況からは考えにくい。さあ、どうしようかと思案していると、別の子猫の鳴き声が聞こえて来た。声はコンクリート製の橋の構造体にある間口50cm四方の穴の中から聞こえ、覗いてみると奥行き1mほどの洞穴状の中に茶色の子猫が2匹居た。それで分かった。はじめの子猫はこの穴から落ちて這い回っていたのだ。そこで子猫を穴に戻し、しばらく様子を見ることにした。
それから毎朝、毎夕欠かさず様子を見ていたが、母猫の姿を一度も目にしたことはなかった。『母猫が腹を空かせているかも?』と、キャットフードを買って来て置いてやっても食べた様子はなかった。ただ、我が家の敷地内には毎晩猫が来ていたので、『それが母猫かも?』とこちらでも餌を出して、こちらは毎晩きれいに無くなっていた。
なにぶん薄暗い穴の中に居る子猫達の様子だけではちゃんと育児されているのかどうかよく分からない。変に人間が手を出しても余計母猫が警戒して寄り付かなくなる恐れもあったので細心の注意を払っていたが、やはり育児放棄されたような気配がする。そこでアメリカに居る妻と相談して、取りあえず僕が面倒を見ることに決めた。
そして今朝、子猫を連れて帰ろうと穴を覗くと姿がない。『あれ?母猫が子猫達を連れてどこかへ移動したのかな?』とはじめは考えたが、次の瞬間それはかき消されてしまった・・ふと足下を見ると点々と小さな血痕がある。そして薄暗い辺りをよく凝視すると血に混じって肉片のようなものも僅かに残されていた。『!!!』衝撃だった・・
その恐ろしい結末を僕は受け入れがたかった。しかし事実は事実だ。おそらく子猫達は何者かに襲われ、喰われてしまったのだろう。それが母猫なのか、野良犬なのか分からない。ここにはよくヌートリアが出没するのでヤツらかもしれないが、子猫を襲うだろうか?そして夕方、Jackie散歩をしていたとき堤防でイタチの姿を見て、『たぶんヤツだな・・』と答えが出た。

それが自然界の『おきて』とはいえ、残酷なものだ。とても受け入れがたいやり切れなさが残る。
僕は後悔している。もっと早く子猫達を保護していれば助かったのだ。しかしそれは今となっては『タラレバ論』に過ぎない。
僕は自分の判断ミスを受け入れる。子猫達の死も受け入れる。
今でも這いずり回っていた子猫を拾い上げた時の温もりと柔らかな感触が右手に残っている。なぜ助けられなかったのか?もっとうまい方法はなかったのか?その悔いと自責の念を僕はこれからずっと背負っていかねばならぬ。

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