2009-04-13

混迷


約ひと月間の滞在を終え、友人が渦中のバンコクより帰国した。
このタイミングでの帰国はある意味うまいこと混乱を避けることができたとも言えるが、友人によると赤い服で統一されたデモ隊の様子を見届けたかったという思いもあったようだ。いずれにせよ奥方が未だ滞在中ということなので、これ以上の状況悪化は避けたい所だが一体どうなることやら・・
この混乱の様子はメディアが伝える映像の範囲で見る限り、タイ独特のものであるなと感じる。それは先の反タクシン派の黄色いグループが行なった国際空港占拠事件の時にも思ったが、今回のデモ隊の行動及びそれに対する政府の対応には驚きを禁じ得ない。だって、ASEANの会場に乱入してぶっ壊すわ、自国の首相が乗った車を場外乱闘風にパイプ椅子で殴りつけるわ、そこら辺の鉢植えを植木鉢ごと投げつけるわとやりたい放題。しかも首相をガードすべきSPは僅か数人で群衆を実力阻止するでもなく、『やめて下さい!』と防戦一方の様子。それを見ていた妻が『アメリカやったらあり得ん』と驚いておったわな。そりゃこれがアメリカやったらとっくの昔に何十人と射殺されとるやろ。這々の体で逃れた首相は非常事態宣言を出し、今日になってデモ隊に向け威嚇発砲を行ない実力行使に出始めた様子だが、その軍の動きにしても明らかにためらいを持って行動しているのがよく分かる。この点では中国の人民解放軍とはまったく違うな。
タイを例える言葉に必ず出て来るのが『微笑みの国』という言葉だが、流血を極度に嫌う国民性は、寛容さや柔和さを生み、今回のような暴力を伴ったデモ行動が如何に異常な状況であるかをよく映し出している。今回の件に関しては当のタイ人がいちばん戸惑ってしまっているのではないかと僕は思うのだ。軍事クーデターで首相の座を追われ、亡命後身を隠し陰りの見えていたタクシンがにわかに元気を取り戻し、国外から盛んに群衆を扇動しているようだ。国を黄色と赤色に二分する一連の騒動がどこに着地するのか?今の状況ではまったく分からない。これ以上の混乱は主幹産業である観光に大きなダメージを与え、ひいては国民すべてが被害者になる。ごく一部の権欲者らはそれも計算ずくでさらに混乱に拍車をかけ乗じようとするだろう。それを押さえるのは軍だろうか?それともプミポン国王だろうか?
人々の心から怒りや不満が消え、もとのような微笑みが戻るのはいつになるのだろう。

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