2015-05-21

陥落















とうとう、と言うより為す術もなくパルミラがISの手に落ちたようだ。口では『パルミラを死守する』と言っていたシリア政府ももはや統治する能力を持っておらず、さしたる防御戦もできないまま大量の武器をISへのプレゼントとして残してさっさと撤退したようだ。
すでにパルミラ全域がISの支配下に置かれ、遺跡の破壊が始まるまでそう時間はないだろう。なんとも気が滅入る状況だ・・

長い旅の途中で妻とパルミラを訪れたのは25歳の時。当時も観光客は少なく、パルミラが東西貿易の交易路として栄えていた頃を想像しながら歩くには非常に恵まれた環境だった。このパルミラの遺跡の中で一番のお気に入りがベル神殿や列柱道路、ローマ劇場などの遺跡中心部を見下ろす山の上にある『カラート・イブン・マアーン』というイスラム勢力が築いた城跡だ。ここへは乾いた山道をひたすら歩いて登るのだが、その城跡からの眺望は絶句するほどに素晴らしい。パルミラ遺跡全体を俯瞰できる上、ここを吹き抜ける風や大地の匂いがまるで身体をふわりと持ち上げるように心地良く、しばし陶酔していた。

そんな思い出深き場所が気狂い集団によって破壊されようとは、全く受け入れることができない。何としても破壊から守って欲しかったが、シリア政府は力無く、UNも足並みが乱れて 話しにならん。
ただただ破壊から逃れるよう祈るほかない。

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