2012-08-21

シリア大乱


シリア北部の主要都市アレッポで女性ジャーナリストの山本美香さんが銃弾に倒れた。戦争の実態、特に戦争弱者である女性や子供達の実状を撮影し続けて来た彼女の生き様には敬意を表し、その早すぎる死を悔やんでならない。

連日、政府軍と反政府軍との激しい戦闘が報道されているアレッポは、オリーブ石けんで有名な都市だった。僕と妻が訪れたのは確か1999年だったと思う。首都のダマスカスから北上し、トルコへ抜ける時に立ち寄ったのだ。商業都市でもあるアレッポはスーク(市場)が至る所にあって、市場好きの僕にはたまらない魅力のある街だった。特に旧市街を見下ろすように聳える古代ローマ時代からのシタデル(城)は圧巻のど迫力で、このシタデルを中心に広がる城壁で囲まれた旧市街の喧噪とスークに漂うスパイスの香り、それと今にも倒れそうなくらいに積み上げられた名物オリーブ石けんの山々など、記憶の風景が次から次へと蘇ってくる。それらがこの内戦によって様変わりしてしまった。今までにも何度か書いているが、シリアの一般の人々は非常に温厚で他のイスラム諸国に比べてもその人の良さは突出していた。しかし彼らの雰囲気にはどこか抑圧されている気配が感じられ、常に秘密警察の存在を恐れてもいた。そう、今突然思い出したが、シリアを列車で移動中にたまたま乗り合わせた身なりのいいおじさんが、『自分はシークレットポリスだ』と言って腰に差した拳銃をひけらかしたこともあった。そのとき『全然シークレットじゃないやんか!』と思ったものだ。おそらくそういった連中が政府軍側として一般市民に発砲しているのだろう。恐ろしいことだ。
アサド大統領の御代もそう長くはないだろう。しかしシリアの混乱はその後も長く続くことになりそうだ。ダマスカス旧市街にサラーフッディーン(サラディン)の勇姿を伝える騎馬像があるが、国際社会が何の手も打てぬ今のシリアの現状では彼のような英雄の出現しか救われる道が無いようにさえ感じてしまう・・

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