2009-10-13

船出


さて、明日はどこへ行こうか?
バックパック一つを背負ってそんな生活を2年半も続け、旅することが旅の目的のようになっていた10年前。その後何度か旅に出たものの、まったく時間の制約が無く、何ものにも縛られない旅をもはや味わうことは出来なくなっていた。
旅を続けていた頃は例えば何処かの観光地へ行く時間が無くなったとしても、『次回行けばいいや』と至極当然のように流していたが、いざ帰国してしまうと様々なしがらみや仕事などで時間が無くなり、その昔軽く考えていたようには物事が進まなくなった。今や子供も2人いてさらにその傾向は強まり、あの旅の空のもとに戻れるのは一体いつになるのだろうか?と、なかば諦めムードだ。
なあに、ただ明日やらねばならぬことが何も無い、まったく更の状態が懐かしいだけなのかも知れない。あの時の僕には時間は有り余る程あり、物事のすべては自分から動かなければ何も進展しなかった。そこには流されるという要素は無く、自分そのものが旅のスタイルとして現れていた。よってこの広い世界のある一点に、同じような目的を持った人々が集まるという現象が度々見られ、みな気の合う愉快で痛快な仲間たちだった。
いま自分が歩んでいる道を思うと、そのすべてが『この旅から始まっている』とさえ言える。1997年6月、香港返還をこの目でみたいという漠然とした動機を持って大阪南港より鑑真号に乗って船出し、以来僕は大きく変わり、今の自分が居る。そう、これが自分の選んだ道だったのだ。

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