2007-09-27

バガンの落日


いまミャンマーが激しく揺れ動き、大きな転機を迎えようとしている。軍事政権は容赦なく僧侶を痛めつけ、市民に向け発砲し、先ほどのニュースではAPF通信の日本人記者が銃撃で死亡したという・・またも熱き血は路上を赤く染め、人々の喚声は銃撃によりかき消され悲鳴だけが残された。10年ほど前ミャンマーを訪れた際も既に軍事政権がすべてを統制し、市民の生活が厳しく制約を受けていたのをよく憶えている。他のアジア諸国が目覚ましい経済発展を遂げる中、ニュースで見るミャンマーの街の様子は僕が滞在していた頃とあまり変わっていないようで、特にバスや乗り合いタクシーなどは当時そのままといった感じだ。それだけ経済的にも停滞し市民生活の改善も為されていないのだろう。皆はスパイの存在を疑りなかなか公言しないが、仲良くなった人のほとんどは軍政に対する不満を口にしていた。
あれはシポーからヤンゴンへ長距離バスで向かっていた時のことだ。何も無い路上で皆バスから降りトイレ休憩をしていると、土煙を上げてトラックが走ってくる。なんだろう?と道路に近づこうとする僕の手を男性が引き寄せ、『ヤツらは危険だ、近寄るな!』と警告してくれた。通り過ぎたのは迷彩服に身を包んだミャンマー軍の精鋭部隊だった。分離独立運動をしているカレン族を掃討しに行くのだろう、と言っていた。兵隊らは皆揃って首に真っ赤なスカーフを巻いており、迷彩服とのコントラストが今でも目に焼き付いている。その兵隊達が今度は首都に集結し、弾圧を行なっている。
ミャンマーの人々はとても信心深く穏やかで、長旅で疲れていた僕を優しく癒してくれた。特に寺院で仏像の前に座り込み、一心に祈りを捧げるでも無く恍惚とした様子で仏陀の顔を眺め続けている様は感動すら覚えたほどだ。だからこそ今回の武力鎮圧で死傷者が出ていることに心が痛む。無辜の人々を傷つけ、死に至らしめた軍政にもう未来は無いだろう。これ以上の血が流されないことを切に願う。

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