2007-08-22

虚像


やれやれ、また始まった。バットで祖父を殴り首を絞めて殺した16歳の少年の行動は異常で残忍なものだが、だからと言って彼が何か特別な存在であったかと言うとそうではない。日本全国どこにでもいる普通の高校生なのだ。しかし、世間は彼が普通であることを許さない。人を殺すような人間が我々と同じであるはずがない、あってはならないと言わんばかりに少年の過去を知る者や、ちょっと近所で見かけた様子を語る者がメディアに次々現れては彼が1人で壁を相手にキャッチボールをしていただの、友達はあまりいなかっただの、医者の息子で進路のことでかなりのプレッシャーをかけられていたようだだのと、まったく他人様には関係のない大きなお世話的なことをあげつらっては少年に対するネガティブキャンペーン攻勢を強めている。自分の祖父を殺すような残忍なヤツはオレたちワタシたちとは違う人種なのだと決めつけないと安心して眠れないような、そんな過剰反応を感じてならない。事件を起こした少年の人格はズタズタに破壊され、拒否され、葬られた。残されたのは異常な殺人者としての虚像だけだ。その虚像の姿をいくら追ったところで真の彼に出会うことはできないし、同じような闇を彷徨っている者を救うこともできない。彼はごく普通の高校生なのだ。その彼を異常な行動に追いやったモノは何だったのか?その心の闇を明らかにしなければ、このような少年が次から次へと生まれてくることだろう。

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