2007-03-30

檸檬


結婚してからは夜の街を徘徊する機会なぞ全くなくなり、子供が生まれてからは夜に外出することさえ無くなってしまった。もともと夜の街をあてどなくさまようのが好きで、学生の頃は駅までの道のりを毎日違う道を通るようにして楽しんでいた。時間を忘れさまよっていて終電に乗れなかったことも一度や二度ではない。冬の場合は寒さに耐えきれず暖かい所を求めて駅周辺を歩き回り、ガード下のほんの僅かだが暖かく感じる所でホームレスの人たちにまぜてもらい段ボールを拾って来て夜を凌いだものだ。今でも夜の街を歩いているとなにか探検をしているような気分になり、あっちの店のネオンサインに『おお!』と笑ってみたり、にぎやかに騒いでいる店をのぞいては『なぜ自分はあの輪の中に居ないのだろうか?』と、まるで視線と意識だけが浮遊しているような不思議な感覚に捕われたりする。もうそろそろ帰らねばと思う一方、このままずっとさまよい続けていたいと望んでもいる。バックパッカーとして海外を旅していたときもそうだった。たまたま自分は帰って来て今ここでこうして生活している。たまたまなのだ。

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