2019-09-28

友よ、























友よ、
この夏、君がライフワークとして取り組んでいたカシミールでは大きな動きがあった。
ヒンドゥー至上主義を掲げるインドのモディ政権がジャム・カシミール州の自治権を剥奪し、戒厳令を敷いたのだ。今でもインターネットなど外部との通信は全て遮断され、いったい中で何が起きているのか、誰も分からない状態となっている。
もう20年も前になるが、君がカシミール州都のシュリーナガルで撮影したモノクロ写真をよく覚えている。常に小競り合いを続けている地だけに頻繁に訪れることは難しかったが、それでも君は『行かねば』という使命感に駆られて現地に向かって行った。
そんな君と議論をした時、『戦争には反対だ』と僕が言うと君はいつものはにかんだ表情で『戦争は必要悪だ』と言った。それを聞いた時『イヤにドライだな・・』と感じたが、それはおそらくこの平和ボケした日本に居て、差し障りのない内容の報道のみを見ている僕が、いともたやすく『戦争には反対だ』と言ったことに対する君の苛立ちが、その言葉に出たのではないかと今は思っている。
カシミールでの緊張が近年にないほど高まる中で、君の不在を惜しむ人間は僕ばかりではないだろう。君が何度も訪ねフィルムに収めていたシュリーナガルの人々もまた、いま君のような人を必要としているはずなのだ。
やはり君は早く逝きすぎたよ・・

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