親子2代50年に渡って独裁・恐怖政治を続けてきたアサド政権が脆くも崩壊した。反政府勢力がダマスカスに入り、アサド大統領は飛行機で何処かへ逃亡したらしい。『アラブの春』をきっかけに始まったシリアの内戦は13年に及び、その間夥しい数の人々が戦禍で死傷し、投獄されてきた。それが11月30日に起きた反政府勢力のアレッポ攻勢から10日足らずでのダマスカス陥落となった。その展開の速さは驚くべきものがある。反政府勢力の指導者たちはよほど周到に作戦を練ってきたのだろう。長年シリアの後ろ盾となって支えてきたイランとヒズボラはイスラエルとの戦闘で大きくその力を削がれ、ロシアもウクライナとの戦争でシリアを助ける余裕がなくなっている。その力の均衡が崩れたタイミングを逃さず一気に攻勢に出てダマスカスを奪取しアサド政権を崩壊させた武装勢力は大したものだと思う。50年に渡る独裁政治に終止符を打った反政府勢力は英雄かもしれないが、解放者として彼らを迎えるには危うさを感じる。アサド政権打倒までは反政府勢力として協力してきた各グループが今後主導権争いを始め、それが新たな内戦を生む可能性もあるし、反政府武装勢力の主体がアル=カーイダ系であることも今後どんな政府を樹立するのか注目するところでもある。またアメリカやトルコをはじめとする外国勢力もそれぞれ支援しているグループがあり、それらを全てを束ねることができる人物がいるのかどうかも不明だ。
独裁政権が崩壊したのは喜ばしいことだが、それが新たな独裁政治の始まりとならぬよう心から祈るばかりだ。
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