2007-11-12

X-Day


予想外に強く降る雨の音を聞きながらいつもよりゆっくりと起き、10時半の予約に間に合わせるため自宅から30分ほどの総合病院へ向け9時半に出発する。時間にゆとりを持った筈だったが途中工事のために渋滞し、遅々として進まない。時間は迫るし気も焦るがこればかりはしょうがない。何とか間に合いすぐにCT室へ入ると、巨大な輪っかが待ち構えていた。上着を脱ぎベットに仰向けに横たわるよう指示され、大人しく従う。突如ベットがスライドし輪っかの真下に入るとCT機がロボット声で『大きく息をして下さい・・息を止めて下さい」と言うではないか!思わず緊張して硬直した視線の先では5cmほどの隙間の中で何かの機械が超高速で『ブムブム』と回りだし、どうやら僕を『鎌イタチ方式』でスライスしているようなのだ。一連の動作が終わりベットが引き出されると、X線技師と看護士が現れいまから血管に造影剤を注入するので覚悟せよ!と長さ20cmほどもある極太の注射器をCT機から伸びるアームにセットし腕に刺そうとするので、うろたえて『ちょっと太かーないですか?』と言うと『針は同じですから』と軽くいなされ、セット完了。『いまから造影剤を注入しますが、体温上昇や喉の渇きなどの症状が出ます。気分が悪くなったら言ってね』と言い残して看護士が去り、部屋にはX線技師の声で『注入開始!』とアナウンスが響く。どうやらリモート操作で機械が僕に造影剤を注入しているようなのだ・・と、キタキタキター!全身が酒を飲んだときのように火照って来る。喉もいがらっぽいぞ!あまりの効力の早さに戸惑っているうちに再びベットはスライドし、散々にスライスされ放免された。身体の火照りは取れぬまま呼吸器科の待ち合いで1時間以上も待っただろうか、呼び出しを受けドキドキしながら席につくと、医師の前のライトパネルには僕の肺のスライス画像が30カットほども貼り出されていた。医師の診断は『何もないですねー』だけだった・・。すこしの間を置き『よくあることですか?』と尋ねると、さも申し訳なさそうに『健診のX線では何かの原因でよくひっかかるんです。でも、再検査して何か発見される例はまれですね』とのこと。結局医師は一度も僕の目を見ぬまま1分にも満たぬ診察を終えた。この日の診察料は9960円。この検査結果をもって今年も体調は絶好調と確定した。
それにしても何とも言えぬ不安に包まれたこの数週間は何だったのだろうか?今回はたまたま結果が『良』と出た、ただそれだけのことだ。自分は小さい頃から人一倍身体は強かった、健康には絶対の自信があった。でも今回のことでその自信が大きく揺らいだのは間違いない。再検査が僕に与えた影響は肉体的にも精神的にも大きかった。バカみたいだが何となく肺の辺りに違和感を感じ、実際に痛みも感じていた。それらはすべて精神面からくる作用だったのだ。同じ一つの痛みでも検査結果が『良』ならば幻覚で、『悪』ならば実感なのだ。ガンではなかった。サルコイドーシスでもなかった。でもいつ自分がそれらを患ったとしてもなんらおかしくはないのだ。
病院を去る時看護士が『お大事に』と言った。『なんだ、オレは病人じゃねーぞ』と思ったが、ここ数週間は間違いなく精神を病んでいたのだ・・

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