2007-11-18

シドル


バングラデシュを直撃したサイクロン『シドル』は現時点で2千人以上もの命を奪っていったという。その被害のひどさに慄然とし、亡くなられた人々のご冥福を祈りたい。
10年前ミャンマーのヤンゴンからビーマンバングラデシュ機に乗り、首都ダッカに着陸する時に見た風景は今でもはっきりと憶えている。飛行機が厚い雲を抜け徐々に高度を下げ始めると窓外には水と緑にあふれた大地が広がり、その当時貧困という暗いイメージしか持っていなかったバングラデシュに対する視点が、国に降り立つ前にあっさりと塗り替えられてしまった。だからと言って貧困がなかった訳ではない。街を歩けば目を背けたくなるような光景が其処ここに見られ、その対応に自分も悩み、自身を嫌悪し、心身ともに消耗しきってしまった時期もあったが、バスや列車で移動すれば緑豊かな土地が開け、水辺ではしゃぐ子供達を見て微笑んだりもしたものだ。
ヒマラヤに源を発し、インドを経巡って流れる大河ガンジス川がその諸々を一気に吐き出すのがここバングラデシュなのだ。上流から運ばれて来る様々な養分により土地は肥え、緑は深いが、同時にあまたの人々の祈りや穢れをも受け止めねばならない。豊かな土地なれど永遠に浄化されることなく、そこに住まう人々は破壊神の気まぐれに常に翻弄され続ける。これを救うものが『アッラー』なのか?
世界一長いと言われるコックスバザールのビーチには無邪気にはしゃぐ観光客とは対照的に砂浜のニッパ小屋で細々と暮らす漁民達がいた。彼らはこのサイクロンを乗り切っただろうか?小屋に招いてくれた少年は、お茶を出してくれた老婆は生きているだろうか・・

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