2007-07-12

炸裂


台風と梅雨前線の影響で猛烈な雨がしばらく降り続き、現場は池のように水没してしまった。迅速な排水を行なうために水中ポンプを20基近くも稼働させていたため電柱に載せてあるトランスに負荷がかかり過ぎ、日も暮れ始めた頃になって大きな爆発音とともにトランスが焼けてしまった。当然電気も遮断されすべてのポンプは止まり一面水浸しの風景だけが闇に溶け込んでいった。爆発音は事務所の中で聞いたのだが、その音を花火と思った人もいたようだ。それだけいまの日本は平和な国なのさ。10年前ベトナムから陸路カンボジアへ入ったときはクーデターの直後で機関銃やロケットランチャーを手にした兵士がそこら中にあふれ、アンコール遺跡近くの街シェムリアプでは真夜中でも地鳴りのように迫撃砲の着弾音が響いていた。まさかトランスの爆発音を着弾音とは思わないが記憶のどこかでそういう音に対するイメージが何かしら残されているようだ。電柱に登り状況確認している技術者を見上げながら僕は記憶の中を旅し、10年前のあの街を歩いていた。

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