好きな木は?と聞かれたら僕は樟だな。
決して美しい木とは思わないし、欅のような繊細な上品さもない。無骨でふてぶてしい感じさえする。それなのになぜか惹かれるものがある。ずいぶん前になるが三重県の九鬼に写真を撮るため通っていたことがある。ちょうど部落裏手の山の斜面に墓地があり、その中央あたりに堂々とした樟が腕を大きく広げ鎮座していた。肌にべとつく蒸し暑さの中で大汗をかきながら見上げたものだが、その樟の『俺がここにこうしているのは当然のことだ!』と言わんばかりの存在感には圧倒され、ヤブ蚊に刺されながらしばらくの間呆けてしまっていた。その樟の生命力に満ちあふれた姿は疲れていた僕を元気づけてくれた。樟の持つそうした強靭な生命力に僕は惹かれているのだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿